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スタジオの近所の公園。木陰のベンチは俺の密かなお気に入りの場所。
スタジオのエントランスからはまったく反対方向にあるこの公園は、意外とスタッフに気づかれにくい。
ぼんやりしたい時はよくここへ来る。缶コーヒー1本買って、煙草も少なかったら買い足して。
気が済むまでここでぼんやりしてるのって大好きなんだけど。
「……INORAN見ーっけ」
なぜか、人生の半分以上の付き合いになるJにすら見つかりにくいこの場所を、すぐに探し当てるヒト。
今日も見つかった。ここへ来てから火をつけた煙草、まだ半分も吸ってないのに。
「……また見つかっちゃった」
「うん、見つけた。なにしてんの?」
「んー? ……なんだろうねぇ」
言いながら唇の端だけで笑う俺を、SUGIちゃんはむーっと唇を尖らせて睨んでくる。
ベンチに座ってる俺を見下ろすSUGIちゃんの髪が木漏れ日に透けて、綺麗。
逆光になってるせいでSUGIちゃんの表情がわかりにくいから、尚更。
「INORANはいっつもそうやって俺まで煙にまくんだからー……」
「そうだっけー?」
「そうだよー……Jみたいな単細胞バカなら、煙にまかれたって仕方ないだろうけどさ」
「単細胞バカ、ねぇ……いい言い方だ」
「……俺が一番言いたかったトコと別のトコで反応してるし……って、それが『いい言い方』かよ?」
「うん。そのまんまだし。ちょうどいいんじゃない?」
けろりと言ってのける俺に、SUGIちゃんが笑った。
楽しそうに。すごく楽しそうに。
「そんなに楽しい?」
「楽しいって言うかねぇ……可笑しい」
「まぁ可笑しくなかったら、誰もそんなに笑わないだろうけどね」
「うん、可笑しい」
笑ってるSUGIちゃんを見てるのが楽しくて、俺も笑った。
二人で笑って、缶コーヒーで間接キスして、煙草は俺が1本プレゼントして。
二人でぼんやり。
意味もなく顔を見合わせては笑って。
「……っ、な、なに!」
ぼんやりしてたら、SUGIちゃんがいきなり俺に煙を吹きかけてきた。
無防備だった俺の顔にまとわりつくように広がった煙に、見事に咳き込んでしまう。
ああもう、煙草でむせるなんて何年もなかったのに!
恨みたっぷりの視線を投げた先には、勝手に出てきちゃった涙で滲んだSUGIちゃんの顔。
「煙にまいてみただけだけど?」
余裕たっぷりでにっこり笑うその顔は、それでもすごく綺麗。
でも、されたことは悔しいから、同じことで仕返し。
「……まき返してやる」
「わっ! 悪かったよ、ごめんって! INORAN!」
楽しそうに笑いながら煙から逃げようとするSUGIちゃんを見てたら、やっぱり笑いたくなって。
俺が笑ったら、SUGIちゃんはそんな俺を見て笑った。
「俺ねぇ……INORANのその顔、好き」
「笑ってるの?」
「そう、その顔。すげぇ好き」
SUGIちゃんはそう言いながら俺の手から煙草を取り上げた。
ちょうどフィルター近くまで灰になってた煙草を軽く吸って、灰皿になすりつける。
「さてと。そろそろ行きますか?」
立ち上がったSUGIちゃんが優しく笑ってて、だから俺は。
同じ顔で笑って、SUGIちゃんの腕にしがみついてみせた。
「SUGIちゃん」
「ん?」
「俺もねぇ」
SUGIちゃんの腕を放して、一歩半だけSUGIちゃんより前に出て、振り返りながら言ってみせる。
「SUGIちゃんの笑ってる顔、大好きだよ」
そう言えば、SUGIちゃんが優しく笑ってくれることを、俺は知ってる。