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「煙とナントカは高いトコが好きって言うけど、ほんとに好きだな。J見っけ」
「るっせぇ……」
雑誌の撮影で訪れたビルの屋上。
全館禁煙だなんてプレートがあちこちにへばりついてるこのビルで煙草を吸うには、ここへ上がるしか方法がなかっただけで、だから。
「煙草吸いに来ただけで、屋上好きってわけじゃねぇぞ」
「でも好きだろ? 高くて見晴らしよくて……風の強い場所」
屋上っていう名称にとらわれないその言い方には、思い当たる節がなくもない。
確かに、常に風のある場所は好きだ。
完全防音で外の景色もわからないようなスタジオより、ヒートアップする一方のライヴハウスやホールより。
風のある場所が好きだ。
高ければ尚更だし、見晴らしがよければ言うことはない。
「俺さ……髪長かった頃のお前がこういう場所にいるの見てるの、好きだったよ」
相槌は打たずに、ただ煙をゆっくりと吐き出した。
不規則に向きも強さも変えるビル風に乗って、煙は一瞬だけSUGIZOの横顔を隠した。
「前髪長くてさ、それが風に流されて、お前の顔ちょっとだけ見えんの。そういうの好きだった」
「……だから前髪また伸ばせって?」
「そういう意味じゃないけどさ」
言いながら笑うSUGIZOの顔は、風に乱された髪で隠れた。
「……SUGIぃ」
「んー?」
乱れる髪を軽く押さえて振り返ったSUGIZOの表情は、ただ穏やかで。
「……お前もさ、前髪長いじゃん、ずっと」
「うん」
「お前の顔が、その前髪の向こうに見えるのは、好きだぜ?」
「……ふぅん」
興味なさそうな口ぶりでまたあらぬ方を見やったその口元が、微かに歪んでた。
笑ってるんだって、考えなくてもわかった。
それだけでよかった。
煙草から細く立ち上る煙が、またSUGIZOの横顔を隠した。
だけど、その横顔が微笑んでるのを、俺は知ってる。
だから、それだけでよかった。