Day 2(Sunday, Oct. 3rd, 2004)

"East Side Story"リッチを知ることができる街

- NYC 第2日目 -

今日は終日NYCだ。いつもの旅行のように、携帯を目覚時計*1に利用して7時に起床、シャワーを浴びて着替えた。取り合えず、ホテルを出たスタンドで、New York Timesの日曜日版($2)を買うが、早朝の通りは昨日の喧噪が嘘のようにとても静かだ。お目当てはスポーツとショーをチェックするためだが、2kgはあろうかと思われる新聞の束を小脇に抱えて、例の“東の横綱”駅であるグランド・セントラル駅へ歩いた。

    

この地下にあるJunior'sで朝食を取ったが、日曜の朝にグランド・セントラルでサンド・イッチなんて、まるで誰かさん*2のマネさ。残念ながら尼さんたちはいなかったが、例え見かけたとしても寄付はしなかっただろうけどね。ハムや野菜が何重にも重ねたれた分厚いサンドとラージ・オレンジ・ジュースで$12.43だった。カウンタで清算して近くのベンチで食べたが、サンドに付けるマヨネーズとマスタードの小袋を6個もくれたけど1個ずつしか使わなかった。

  

5番街〜Madison Avenue(マディソン街)〜Park Avenue(パーク街)〜Lexington Avenue(レキシントン街)〜3rd Avenue(3番街)と西から東へEast Side(イースト・サイド)を散歩した。今日の目指す訪問ポイントは下記の通りだ。

   【5th Avenue】
   ・"B. Altman's & Co." on 5th-Madison Avenues & 34th-35th Streets
   ・"Lord & Taylor" on 5th Avenue & 38th Street
   ・"Brentano's" on 5th Avenue & 47th Street
   ・"Saks Fifth Avenue" on 5th Avenue & 49th-50th Streets
   ・"Bonwit Teller" on 5th Avenue & 56th Street
   ・"WALK & REST" on 5th Avenue & 60’s Streets
   【Madison Avenue】
   ・"Biltmore Hotel" on Madison Avenue & 43rd-44th Streets
   ・"Brooks Brothers" on Madison Avenue & 44th Street
   ・"Lun Far's" on Madison Avenue & 58th Street
   ・"Apartment House" on Madison Avenue & 70th Street
   ・"Schrafft's" on Madison Avenue & 77th Street
   ・"Apartment House" on Madison Avenue & 79th Street
   ・"Parade" on Madison Avenue & 90th Street
   【Lexington Avenue】
   ・"Seton Hotel" on Lexington Avenue & 40th Street
   ・"Muriel’s Grandmother’s Home" on Lexington Avenue & 63rd Street
   ・"R.K.O. Theatre" on Lexington Avenue & 86th Street
   ・"Davega’s Sports Store" on Lexington-3rd Avenues & 86th Street
   【3rd Avenue】
   ・"Bloomingdale's" on 3rd Avenue & 59th Street

まあ、上のリストは、分かる人は納得するけど、興味のない人には何の足しにもならない情報です(悪しからず)。でも、チョットだけTipを提供すると、パーク街は、一方通行の多いマンハッタンでは少数派の対面交通道路だけど歩行者横断用に中央分離帯があり、そこから南を見るとグランド・セントラル駅の上にそびえ立つMet Life Bilding(僕らにはPanam Bildの方が通りが良い)が正面に見える格好の撮影ポイントなんだ。ところで、この道路は北に向かって上り坂になっているから、できるだけ北側から写真を撮るのがお勧めだけど、あんまり行き過ぎると傾斜が緩やかになって眺望は良くないんだな。パーク街から南の風景を納めるなら、67丁目がベストだと思うね*3


10時オープンのThe Metropolitan Museum of Art(MET:メトロポリタン美術館)*4に入った。正面右奥に窓口があり、$12と引換えに“M”がデザインされた金属製の丸いAdmission Button(バッチ)をくれるが、これが入場券に相当する“印”で曜日毎に色が異なり(この日は水色だったが、1977年に使われて以来600色以上作られたらしい)、付けていれば何回でも出入りできる。おまけに、同日ならばマンハッタンの最北190丁目のFort Tryon Park(フォート・トライオン・パーク)にあるThe Cloisters(クロイスターズ美術館)へも入れる。ここは、METの分館で中世宗教美術が充実している(らしい)のだが、なにせ遠方(バスで約1時間*5)なので今回はパスした。

  

昨今の骨董品やお宝ブームに乗っかってかアートなんぞを見る機会が増えたが、残念ながら“本物”だと言われればそう感じてしまう程度の鑑識眼しかなく、コピーやレプリカが展示されていても分からない。「贋作を掴まされる原因は、Need(需要)、Speed(迅速)、Greed(強欲)」ってのを読んだのは、METの館長だったThomas Hoving(トマス・ホーヴィング)著『にせもの美術史-メトロポリタン美術館長と贋作者たちの頭脳戦』『ミイラにダンスを踊らせて-メトロポリタン美術館の内幕』のどっちかだったと思う。切望していたものを目の前にすると、本質を見抜けずに騙されてしまうのは何事も同じなのだろう。ちなみにホーヴィングは、Tiffany & Co.(ティファニー宝飾店)の旧経営者一族の一人だそうで、なんとなく納得。アートの背後に隠されている人間の知性と感性に挑戦するスリリングな歴史をオーバー・ラップさせながら歩くとそれなりに楽しめる。


好きな「ヨーロッパ美術」へ入ってイタリア・ルネッサンスのキッカケの最大功績者とされるジョット、印象派のゴッホ、ゴーギャン、モネ、ルノワール、マネ、ドガ、シャガールと次々に“有名処”を通り過ぎながら、そう言えば映画『DRESSED TO KILL(殺しのドレス)』もこんなサイレントな感じだったっけ、とムンクの辺りで考えた。レンブラントへ辿り着いたら食欲を意識したので、余り興味のない「アメリカ美術」はパスして「ギリシャ・ローマ美術」を見てからカフェ・テリアへ入ったが、セルフ・エリアは満席のため食事エリアへ座りコークとチーズ・ケーキを頼んだものの、料理には周囲のギリシャ彫刻を模した内装ほどの感動はなかった。その後、今夏の「大英博物館の至宝展世界一周1万年の旅」で見たのミイラの強烈な印象を再び味わいに「エジプト美術」へ移動した。この夏には「ルーヴル美術館展中世フランスの秘宝」も観ており、なんと充実した年だったことか(笑)。


METを出てCentral Park(セントラル・パーク)の東側をブラブラ南下し、途中からパークの中に入って65丁目近くにあるハスキー犬像を見つけた。ここは、『SIX DEGREES OF SEPARATION(私に近い6人の他人)』に登場した場所で、Will Smith(ウィル・スミス)演じる貧しい青年Paul(ポール)が暴漢に襲われた振りをしてDonald Sutherland(ドナルド・サザーランド)とStockard Channing(ストッカード・チャニング)の金持ち夫婦を騙すんだけど難解な映画で、登場する『ライ麦畑』は、『アニー・ホール』と同様な役割だった。

  

そこから親子連れで賑わっているThe Carousel(回転木馬)や、碁会所のように知らない人とチェスをやる小屋や、子供のおもちゃを売っているショップなんかを見たりしながら、日曜日のセントラル・パークを散歩した。木陰で絵を描いている女性(日本人?)、犬を連れたご近所さん(こういう光景は良く見かけたが、野良犬や野良猫は皆無だった)、全米(全世界?)から訪れた観光客などに混じって休日の優しい陽の光を受けていると、とっても心の芯まで暖かくなるような気がした。

    

Columbus Circle(コロンバス・サークル)からセントラル・パークの外に出たらみんな上空を見上げていたので何事かと見たら飛行機で宣伝をしているようだった。そんなのを見ながらBroadway(ブロード・ウェイ)と51丁目に挟まれたIridiumまで散歩しながら到着。老舗のJazz Clubだが、以前のウエスト・サイドからこの地に引っ越して来ており、13時からのBob Dorough's Jazz Brunch!が目的たっだ。コーヒー又はティーとmusic chargeがついて$21.95だが、Fresh Baked Muffins、Mixed Greens、Bread Puddingを追加したら昼食としては結構な値段になってしまったが(笑)、ピアニストの親父はなかなかのエンター・ティナーで十分に楽しませて貰った。

  

マチネ(15時〜)の『THE PRODUCERS*6』を観るためブロード・ウェイと8番街の間の44丁目にあるSt. James Theatre(セント・ジェームズ劇場)へ行く。チケットは初日に入手したが支払いは日本で予約した時に済ませたので$135($35が手数料)だった。2004年で第58回を迎えたTony Awards(トニー賞)の授賞式は、毎年、Radio City Music Hall(ラジオ・シティ・ミュージック・ホール)で6月の第1日曜日に開催されるが、『The Producers』は、2001年(第55回)のトニー賞で歴代最多15部門ノミネート、12部門の歴代最多受賞と言う偉業を達成していた。20分くらい前に着いたけどもう沢山の人が歩道で並んでいた。

  

TV界の才人Mel Brooks(メル・ブルックス)の本格的映画進出第一作にして1968年のAcademy Awards(アカデミー賞)では脚本賞でOscar(オスカー)を獲得した同名映画の舞台化だね。金持ち老婦人の御機嫌を取っては日銭を稼いでいるおちぶれた演劇プロデューサーのマックスは、神経質で小心者の会計士レオの「どんなに高額の製作費でも赤字なら帳消しにできる」に閃き、できる限りスポンサーを募って金を集めた上で、史上最低の脚本・演出・役者を揃えてわざと芝居を打ち切らせれば大儲けできると考え、渋るレオをパートナーに脚本探しを始めると『SPRINGTIME FOR HITLER(ヒトラーの春)』って題されたナチ礼賛のシナリオが見つかるって、とんでもないストーリなのだが、巨漢のマックス、興奮すると手がつけられないレオ、大真面目に書いたシナリオを笑われ激怒するナチ崇拝者の脚本家、オカマの演出家、「仕事しろ」と言われると服を脱いで踊り出す英語を理解できない美人秘書など奇妙なキャラクターのオン・パレード、ブロード・ウェイの裏側を皮肉と愛情一杯に描いた傑作コメディーなのだが、こう言う作品でもトニー賞が取れるってのがいいじゃぁないか。


Mezzanine(2階席)の最前列ほぼ中央で観ていたら、最後はみんな大笑いしていて、今にも転げ落ちそうだった(ホント)。赤い緞帳が降りているステージの下にオーケストラがいるのが2階席からだと良く見えるが、彼らは役者が見えないのにちゃんと合わせられるのはさすがだと思ったね。公演が終了すると、脇の壁が一斉に開き観客は一気に劇場の外へ吐き出されるんだけど、暗い室内からまだ夕暮れ前の明るい屋外へ出たもんだから眩しくて戸惑ってしまった*7

  

42丁目から地下鉄1 LineでSouth Farryまで乗りBattery Park(バッテリ・パーク)に到着した。Castle Clinton(クリントン砦)でチケットを買いフェリーでThe Statue of Liberty(自由の女神)が立っているLiberty Island(リバティ島)や移民収容施設のあったEllis Island(エリス島)を回るのが定番だけど、例のテロ以降閉鎖されていた自由の女神の展望台は、今年の8月にほぼ3年ぶりに再開されたものの上がれるのは台座最上部の展望デッキまでで像本体への立ち入りは相変わらず禁止されていたし、前にも同じコースを辿ったので今回はパス。

そのフェリー乗り場と反対の南東端にある地下鉄Bowling Green Stationの入口の近くで、かってWTCのツイン・タワーの間にあった傷だらけのSphere(写真左)を見つけた。当時の記事(写真右)を見ると分かると思うけど、ちゃんと地球の形をした球形だった。

  

そこから北西のGrand Zero(グランド・ゼロ)へ歩いた。10数年前に登ったWorld Trade Center(WTC)の面影はなく、事件現場の撤去作業も終了して見学用のデッキも閉鎖されていたけど、取り囲むビルにはまだ修復されていないのもあった。現場の南側にあたるLiberty Street(リバティー通り)からだけ内部の様子を見れて、現場の東側には鉄筋で作った十字架と傍には大きな星条旗がはためいていたし、そう言えば現場やそんなモニュメントを見て、あの事件に対する悲しみや怒りや寂しさよりも一瞬にしてあのWTCがなくなってしまったことについての不合理感を抱いたのは、実体験が伴わないせいなのか、それとも想像力の欠如によるものなのか、今も解らない。とにかく"The World is faced with an unprecedented crisis."を実感。

  

そこから北東のCity Centerへ向かって歩き、Surrogate's Court(サロゲイツ裁判所)に到着した。Municipal Building(マニシパル・ビル)の前に建つフランス様式の建物(1907年築)は、『陰謀のセオリー』では、アリス(ジュリア・ロバーツ)のオフィスだった。残念ながら、暗くて写真は撮れなかった。この辺は、ニューヨーク大学のキャンパスにも近く、夜になっても随分にぎやかなのだが、それなりに緊張感のある街だ。ブロード・ウェイに沿って北上しても、なんだか身構えてしまう雰囲気がある。聞こえる会話も英語以外のようで、なんだかやばそうな気分になり早々に地下鉄で退散することにした。


危険地帯を脱出したら何か物足りなさを感じてしまい(笑)、ホテルへ戻る前に42丁目の吉野家へ入った。例のBSE問題で日本では暫くお目にかかっていなかった$5.49のBeef Bowl Large(牛丼大盛)を頼んだんだけどやっぱり懐かしい味だった。NYCには、Times Square 42nd Street(253 West 42nd Street New York, NY 10036)、Yoshinoya 23rd Street(110 East 23rd Street New York, NY 10010)、Yoshinoya 46th Street(24 West 46th Street New York, NY 10036)と3店舗もあるので、出かける前に検索しておけば。

  

ホテルへ戻ろうとしたら、街頭でモクモクと煙を放出している屋台に出くわして焼き鳥のような串刺しにしたシシカバブーをパンに挟んだ奴を1つ($3)食べてしまった。NYCにはあちこちに屋台がおり、いつでも飲み物や食べ物が手に入る。その分、日本のような自動販売機はない。


25時、ホテルに帰還。今日も「午前様」だった。NYCもあと一日だ。

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*1:自動時刻セット機能があるんだけど、米国でもこれは有効で、勝手に時刻合わせしてくれるので手間いらずだった。おまけに目覚時計としても働いてくれて、持ち物セーブにも貢献してくれた。但し、日本に比べて米国での連続待受時間は1/4くらいになっちゃうとのことだったから、標準品のACアダプターで毎晩充電していた。

*2:Holden Caulfield(ホールディン・コールフィールド)さ。NYC滞在中の主たる目的は、『THE CATCHER IN THE RYE(ライ麦畑)』と好きな映画の舞台となったポイントを訪問することだった。幾つ登場するかはお楽しみってことだ。

*3:基本的に、南北はAvenue、東西はStreetが直線的に走っている、京都や札幌のような分かりやすい造りのマンハッタンだが、同じ通りでも、通称の方がメジャーだったり、あるいは、途中で名前が変わっているケースも多々ある。6番街は、Avenue Of The Americasの方が通じやすいし、8th-12th Avenuesは、ミッド・タウンより北のWest Side(ウエスト・サイド)では、Central Park West、Columbus、Amsterdam、West End、River Side Driveって名前に変わっている。ウエスト・サイドについては、Day 3を参照。

*4:METにしろAMNHにしろ、展示内容を考えれば支払う(“入館料”ではなく"Pay as you wish"って“寄付”の形態)$12は全然高い額ではないが、Washington D.C.のSmithsonian(スミソニアン博物館群)が無料なのを考えるとちょっと不思議に思う。The British Museum(大英博物館)も入口に寄付用の入れ物はあったけど無料だった。そう言えば、The Museum of Modern Art(MoMA:近代美術館)は、全面改装工事中で見られなかった。今年秋には床面積が倍近くへ拡張され開館75周年に合わせて再開されるとのこと。ちなみに、改築費は4億2,500万ドルで、日本人建築家の谷口吉生氏の設計だそうだ。

*5:32丁目からマディソン街に入ってイースト・サイドを北上し、110丁目で左折してセントラル・パークの北端を西へ向かって走り、ウエスト・サイドの北側に位置するMorningside Heights(モーニングサイド・ハイツ)に入ると、ブロード・ウェイで右折してズ〜っと北上するバスM4を使う。グランド・セントラル駅から乗り込めるし、帰りはマディソン街ではなく5番街を南下するので、観光バスとしての価値もあり、カネがないけどヒマはある方へお勧めのルートだ。

*6:2001年4月19日初演で、途中15分間の休憩を挟み2時間50分。Nominee(ノミネート)とWinner(受賞)は以下の通り。こっちは映画版->

   ・Winner: Actor (Featured Role--Musical) Gary Beach
   ・Nominee: Actor (Featured Role--Musical) Roger Bart
   ・Nominee: Actor (Featured Role--Musical) Brad Oscar
   ・Winner: Actor (Musical) Nathan Lane
   ・Nominee: Actor (Musical) Matthew Broderick
   ・Winner: Actress (Featured Role--Musical) Cady Huffman
   ・Winner: Book (Musical) Mel Brooks and Thomas Meehan
   ・Winner: Choreographer Susan Stroman
   ・Winner: Costume Designer William Ivey Long
   ・Winner: Director (Musical) Susan Stroman
   ・Winner: Lighting Designer Peter Kaczorowski
   ・Winner: Musical The Producers
   ・Winner: Orchestrations Doug Besterman
   ・Winner: Original Musical Score The Producers
   ・Winner: Scenic Designer Robin Wagner

*7:これらの写真は、公演終了後の観客退出時に撮影したのに、"No Photo, Please !"って係のお姉さんに大声でどやされた。どうも市か州の条例で禁止されているようだが定かではない。今回の旅では、写真撮影に際して3回叱られたのだが、これが2回目だった。1回目はMETでうっかりフラッシュを点けてしまい警備員に怒られた。公共の美術館や博物館では、撮影自体は問題ないけど、フラッシュを禁止している処が多いので注意が必要。残りの1回は、Day 6のどこかです。